add 機械が嗤うスケルツォ

数日前に感想を書くとか言った気がする一冊。


この巻は主に人の心を操ったり読むことができる「赤い手」の能力を持つ、無機人のアフェクティッドであるアマムラ=マコトを中心に進んでいます。
当初、外数員のある仕事を行った後に、とある事故から今までマコトが人の心を操るには直接触れなくてはいけないとしらせていたことが嘘であったということが分かります。
嘘をついていたことに関して、マコトが殺したければ、殺していい(たしか、初めて出てきたときも似たことを言っていた気がしますが)と言ったこともあり、アフェクティッドの代償で現れた感情の過剰を抑えるためにできたもう一つの人格で現在は眠り津についているリンの中途半端な覚醒の影響もあって、自分の心が揺さぶられている不安と不快を持っているアマムラ=アイ(マコトと同姓ですが、血縁関係ではなく、マコトを同時期に作られた世界で三体しかいないアフェクティッドの能力を持つ無機人の一人、アマムラ=ミナの年下(マコトは性別がないため)でミナを助けて、しばらく眠りについていた状態から起きた後、ミナの年下としてアマムラ姓を名乗ったマコトと、日本にやってきてミナの家に居候してアマムラ姓を名乗るアイって感じです)でしたが、コウの制止によって、とまります。ここら辺はアイらしさがでているかなと。

で、多少前後しますが、「人間の思考制御が世界の平和に必須」という考えを持つ、カレルが、最初の仕事のでマコトに関して幾つかの手を打ち、さらにその仕事で殺されたサリンジャーを父のように慕っていたティア=フィルザークが彼の復讐をしようと動きだし、挙句の果てには、マコトが触れなくても操られることを事故から推測し、仕事の後、頭痛がすることをマコトが操つろうとしているのに自分が抵抗しているからだとの被害妄想に走ったミズシマ=レン(大臣)までがマコト抹殺に動き出します。

正直読者としてはこのミズシマは被害妄想に走った最悪の奴ですが、実際近くにそのような存在がいたら、本当にそう考えられないでいられるかと聞かれると自分は多分疑ってしまうでしょうし、無理な考えでもないんですよね...

そして、ミズシマによって、遠隔操縦兵士(リモートソルジャー)にマコトは襲われ、心がない存在は操ることができないために、逃げるしかなくなりますがその際にマコトが勤めていた病院の一人が殺されます。


キレたという描写もないですし、言動も割と冷静ですが、ミズシマを完膚なきまでに叩き潰しましたと。多分、彼なりに怒っていたんでしょうね。
そして、隕石病の影響によって人だけが減った街などを見て『もっと人がいるはず』と思った思考の残滓がいろいろあって光の柱となって、人間の脳を揺さぶり、変種感染者の発祥を促す...みたいなことが発生(前にもありました)し、コウとアイとマコトはそれを止めに行きますと。マコトが思念を一箇所に集め、アイがその護衛、コウが集めた思念に攻撃を加える役と。

しかし、コウには以前にも現れた妹の亡霊的な感じなのが、アイとマコトの前にはティア他(待)が現れ、アイはマコトを守りながらのためにティアに追い詰められてしまいます。余談ですが、ティアはマコトをリンの「おとーさん」だと勘違いしていますと。

コウとの約束のために、負けるわけにはいかないとアイは、自分よりも強力な力を持つリンを起こそうとしますが、当然都合よくおきてもらえませんと。
以前、自分が危機に追いやられたときにリンが目覚めたために、それに近づけるために自分を攻撃し、相当のダメージを受けることでようやく復活させる。
そして、二人(一人)の強力でティアを気絶させると。
で、リンが事情の説明を受けた後の二人の会話がある意味二人らしいですと。

(……ば、ばばばばバッカじゃないの!? 自分を攻撃するなんて、何考えてるのよ?)
(それしか方法はないと考えた結論です。それほど間違いでもないでしょう。『あえて瀕死になり、隠し必殺技を使えるようにしたほうが強い』キャラもいるわけですし)
(それは対戦格闘ゲームだぁー! 人をゲージ消費の隠し必殺技扱いするんじゃねぇー!)
(……そう教わったのは、コウからなのですが)
(うんうん、さすがコウだねー、ゲームにも人生の心理を見つけ出すなんて、すごいすごい!)
(…………とにかく、あなたを起こすには私を消耗させるしかないと思ったことは事実です)

同一人物の人格にしても、かなり違います。すんごく余談ですが、割と二重人格キャラは好きです。
やったらテンションが高いのはリンのみで、かと言って、アイも考え方はかつての「アイリーン・アイリス」時代とは、らしさは残っていますが、違うんですよね。

そして、コウは妹のアヤ(前にでてきたときとは思考が異なっていますと。前の同じ方法ででてきたときは自分勝手な感じがありましたが、今度は同じ亡霊っぽいの仲間を消さないためにコウと戦うと)と対峙しながらも前回は死んでもいいと思っていたのを今度はアイやミナらのために死ねないと思って、妹と光の柱を破壊する。

ここら辺は彼の成長と捉えるべきなんでしょうけど、自分は成長には思えないなと。人間そんな簡単に吹っ切れるもの...っていうか吹っ切っていいものではないと思うんですよ。コウはかなり長く背負っていますので簡単に...ではないのですが、それでも始まった時点から見なければいけない物語の悲しさゆえに長く感じにくいんですよね。

とりあえず、どうにか事態を解決し、めでたしめでたし...ってところでカレルがやってくると。
目的はマコトの勧誘。カレルの目的上、マコトの力はあると凄く効果的ですからね。
それを受け入れる条件として、マコトが出した条件がアイとリンの分離、そしてそれぞれに別個の体を与えて、力をアイの管制下に置くことをマコトは上げる。
それに対してカレルは3つの条件を挙げますけど、そのうちの一つが重いんですよね。
人格の移動ではなくて、コピーであり、そして二人にならないように複写したもとの方の人格を殺すと。
マコトを中心とした巻ですが、個人的にはここの部分が一番印象に残りました。

そして、最終的にアイとリンもそれを望み、それが決定されます。

また、その手術前にティアに関してはマコトが48時間以内に起こせば復讐鬼のまま、起こさなければアイとリンに絶対の忠義を尽くす人格に改変するとされていて、その判断はコウに任されますが、結局起こさないんですよね...
両極端になっているのは、復讐の思いを消すぐらいにしておけば後ろめたさを感じないで思考操作を行ってしまうということでも、一方的に思考をいじるのはどれも同じだと言う主張のもとらしいですと。

たしかにそうなんですよね。どんな理由であろうと、何かをしたらそのことをしたということに変わりないのですから...
少し前から自分が考えて、小説の登場人物とかに作ったりしているのですが、割り切ってしまえばそこで簡単ですが、割り切っていいかは別の問題と。少なくとも自分は否定しますと。そんなこと言える時点で甘いと思われようが否定しますよ。

ティアの忘れたくない気持ちが粉々に砕かれていき、悲しみさえも残らない。
どうなんでしょうね。物語としては悲しいですが、本人は悲しくない...むしろ覚えているよりも幸せになれる...
肯定も否定もしにくいです。上の通り自分は否定しますが。

そして、最後にリンのもともとの人格が消されていくんですよね。
コピーを受け入れたはずなのにいやだと思って、思い続けている間に消えていってしまうリン。
それなのにコピーされた方のリンは本物と変わりなく、アイも消えてしまったことを悲しく思い、その嫌だと思っていた意思を思い出せてしまうと。

いろいろと難しい巻でしたね。

...感想よりあらすじ紹介になっている気が...本当自分書くのは苦手だし...