『君の名は。』感想

よかったという評判を聞いて少し前に今頃見てきたので感想書いてみる
ちょっと時間たってから書いているので多少怪しいところもあり
ネタバレあり


大雑把な感想としてはすごくよかった。けど新記録になるほどかって感じでもある。
個別に評価するとどこも85点くらいで悪いところがそこまでないみたいから合計点もよくなるみたいな

シナリオ自体はすごくありきたりなんですよね
入れ替わる→入れ替わり先の少女が実は数年前の人で町ごと死んでしまったのを知る→助けたい→不思議な力で時間を撒き戻して再度入れ替わり助けようとする→助かる以下略みたいな

ただ、その1つ1つがよくできていた印象でした。

・時間のずれ
入れ替わり+三葉の生まれ故郷は古めの町ということで真っ先に想像したオチ
でありながら私は見ている途中で一度否定しまいました
その理由がスマートフォン+3年という短い時間差
三葉の時代が過去なら違和感なく使えるはずはない、そう勝手に決めつけてしまいました。
スマートフォンの普及具合的にも違和感はなく徐々に移行していった今現在の私たちの世界だからこその演出にも思えました(考えすぎ?)

世界の修正力がお約束の展開、お約束の演出でありながら本当に怖い
確かに入れ替わりはあったはず、その証拠であるスマートフォンのメモ機能が文字化けからの消失、必死に呼んで忘れまいとしても記憶から消えていく相手の名前
一つ間違えればギャグのようになってしまうそれに絶望感を感じてしまいました。

組紐
時間を編み、更に様々なものに『結び』を演出すると言った物語の軸。
これに関する演出が本当にきれいなんですよね。
と同時に三葉から瀧へ、そして再度三葉へと渡った組紐
スマートフォンのメモが消えようが、入れ替わりの記憶が消えようが受け取った人の元で唯一消えなかったそれ。
確かに三葉が渡し、瀧くんが三葉に返した、入れ替わりなどの超常現象に関係なく(後者は時空を超えていますが)二人がしっかり出会って受け取った奇跡を超えた先のものだったからではないでしょうか。
一度糸守町が住民共々滅びた未来が変わったのも組紐が二人の手を渡り合うことでその時間を『結ぶ』こと出来たんじゃないかなと。

・黄昏時、幽世、口噛み酒、
一度完全に入れ替わりが止まり分離された瀧と三葉が再度出あい、町の皆を救うために必要だったもの
幽世は本来終わってしまった三葉の時に一方的につながる道、口噛み酒は「ここからはお前の大切な半分を置いていくことになる」で言われたようなその半分をつなぐための地図のようなものなのではないかなと。
それにより、再度町の崩壊前の三葉と入れ替わることはできた。けれどもそれだけではまだ何も変わらない、変えられない。
多分、仮に瀧が何とかして住民の避難を成功させても瀧の時間に戻った時(そもそも戻れるのか?)糸守町の住民は多くの犠牲を出したままだったのではないかと思います。
黄昏時、「誰そ彼」の時に組紐を返すことで初めて瀧の時間と三葉の時間が『結ばれ』そこから皆を救えるようになったのではないかと。

感想というより考察だなこれ。小説版も読んでない、映画も一回しか見てないで書くのはどうなのかと思いつつ感想に戻ってみる。

序盤の入れ替わりの部分は素直に笑えましたし、忘れないように名前を書こうと言いつつ名前を書くことよりも「好きだ」と気持ちを書いてしまい、そのせいで三葉が名前を思い出せない嬉しさと同居した切なさも好きでした。
(強いて言えばそんなに惚れるような感じが入れ替わっている時にあったかとも思いましたがそこは野暮)
更に上の考察もどきのように適当に書いてもこれだけパッと繋がりを想像できるように編まれた綺麗な物語であり、それに純粋に音楽も映像もそれを後押ししてるんですよね、本当に。
個人的には結局救えなかったバッドエンド、救えたけど互いに二度と会うことはなくちょっとだけ心にチクりと刺さるものを残しながら別々に生きていくビターエンド的なものを覚悟していたので最後に再会できるハッピーエンドはとてもうれしかったです。
流れていた曲の「嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは君の心が 君を追い越したんだよ」
記憶なんて薄れていっても心が覚えていて引っ張っていってくれる。それが素敵でした。

奇をてらうもの、あっと驚くものはそこまでない、けど本当に綺麗で見てよかったと心から思える作品でした。

気が向いたらキャラクター別感想とかも付け足したい気がするけど多分書かないというか書けない気もします。
他の登場人物もそれなりに出番あったとはいえ完全に二人の物語だったと思えますので。

...『君の名は。』はなんだしもうちょっと名前部分に触れた方がよかった気がしなくもないなうん。事件の大本である彗星にも全く触れてないし。